1999年 第24回宮下靖子バレエ団クリスマス公演 「白鳥の湖」 (2)

【白鳥の湖 解説】
イメージ●バレエ「白鳥の湖」が生まれるまで
 1871年、チャイコフスキーは幼い甥や姪を喜ばすために、プライベートで「白鳥の湖」を上演していたといわれています。これは、子供たちが愛読していた「ムゼウス物語」から着想したといわれ、その楽しい遊びを経験した甥や姪たちは、後に「有名な”白鳥の主題”のメロディは、そのときかかれたものとそっくりだった」と証言しています。
 4年後、彼はボリショイ劇場より「白鳥の湖」の作曲を依頼され、初のバレエ曲を二年をかけて完成させます。現在では、バレエ「白鳥の湖」は、「眠れる森の美女」・「くるみ割り人形」に並ぶ「チャイコフスキー3大バレエ」のひとつとなりました。しかし、ボリショイ劇場での初演(1877年2月20日)は、あまり好評ではありませんでした。もっとも、「衣裳が擦り切れるまで、長く上演されたが、もう一度新調するところまではいかなかった」程度の成功は収めているのですが…。
 このバレエが名作としてその名を轟かすようになったのは、チャイコフスキーの死後、当時最高の振付家と言われた天才プティパとその優れた弟子イワノフの手による大改革があったからなのです。
 プティパは、以前、チャイコフスキーと一緒に『眠れる森の美女』を作っており、この作曲家を大変尊敬していましたので、「白鳥の湖」を自分の手でもう一度生き返らせたいと強く思っていました。彼の死後、書斎の奥でほこりまみれになっていた総譜を見て、ますますこの作品の革命性に確信を持ち、台本の書き直しからはじめ、リメイクに取り組んだのでした。そして、1894年、チャイコフスキー追悼演奏会に第二幕を発表。好評を得た翌年に全幕を上演して大成功をおさめます。このとき白鳥と黒鳥を演じたピエリーナ・レニャーニというバレリーナは、第3幕のなかばに、静まり返った舞台を中央まで歩み寄り、軽く指揮者に合図すると、一度も動揺することなく一点上に止まった、完璧なグラン・フェッテを32回転続けるという離れ技を堂々と演じきりました。興奮した観客の喝采はやむことを知らず、レニャーニの名前と「白鳥の湖」は一夜にして街中に響き渡ったのです。こうして、ついに「瀕死の白鳥」は息を吹き返し、現在上演されている「白鳥の湖」が誕生しました。

※マリウス・プティパ フランス生まれ。ペテルスブルグのマリインスキー劇場の専属振付家。
19世紀を代表する天才振付家といわれ、チャイコフスキーをはじめ多くの作品を手掛けた。

●深川版「白鳥の湖」

 それから、約100年。多くの優秀な振付家の手により改定され、上演されてきた「白鳥の湖」は、日本の地でダイナミックな演出とシャープな現代的振付で定評のある”深川秀夫氏”の手によってまた、新たな命を吹き込まれました。
 1998年初演、深川版「白鳥の湖」の大きな特徴は、通常の全4幕を1幕2幕、休憩、3幕4幕という通し上演で構成されているところです。特に3幕の舞踏会のシーンから4幕のクライマックスまでのドラマ展開の演出には際立ったものがあり、感動のエンディングまで一気に引っ張っていきます。
 また、「白鳥」と「黒鳥」は、幻想的なものと現実的なものの象徴として二つの世界、二種類のバレエに対応しています。
 オデットは、心の清い、一途にまじめに恋をしている娘の特徴と自然のおとぎ話的イメージを一体にしたものです。はじめて王子に会ったときは、明朗で、無邪気であり、彼と踊るときは燃えるように、ひたすら彼を愛し、終幕では愛に悲しみ、絶望のとりこになる。妖精的な白鳥のイメージを「細かく正確な足さばき」で強調し、神秘性は「体の柔軟性」と「腕に歌わせる」技術で表現しています。
 オディールは、あらゆる点でオデットと正反対なのに、顔形だけはおどろくほど似ている無情な社交界の美女。そのイメージは現実的なものの象徴として、メーキャップと派手な衣裳によって強く描かれています。
 「白鳥の湖」を主演するバレリーナは、一瞬のまちがいも許されない完璧なテクニックを備えた上、この二人の女性が何者なのかを十分にわきまえ、女優として演じきらなければ成功とはいわれません。
京都初演となる今回は、ニューヨーク研修から帰国したばかりの原美香が「白鳥」と「黒鳥」の二役に挑戦。また、パートナーに初演時にも同役を演じた大寺賢二をむかえ、見所満載のゴージャスな舞台に仕上がりました。

 

 

Hideo Fukagawa

深川秀夫構成・演出・振付 深川 秀夫

名古屋出身。

’69年モスクワ国際バレエ・コンクール、第2位受賞。’70年ヴァルナ国際バレエ・コンクール第2位受賞(第1位無し)。’71年ロンドン・ガラ公演に参加。同年、シュトゥットガルト・バレエ団に入団。ジョン・クランコのもとで踊る。’73年ミュンヘン国立オペラ・バレエ劇場のエトワールとして契約。以降同バレエ劇場の多くの舞台に出演。’99年愛知県芸術文化選奨文化賞受賞。

「白鳥の湖」はバレエを代表する作品であると誰もが思っていることと思います。
これまでにも僕の大尊敬している、ジョン・クランコ、ケネス・マクミラン、フレデリック・アシュトンなど天才振付者によって新しい解釈がされ、その舞台をヨーロッパ生活の中で観て又僕自身踊っていたあの頃がなつかしく、輝いていた自分がいとおしく思います。
そして、時が流れ僕自身の手でこの作品を僕らしく創るチャンスを与えられました。むつかしさと照れを感じながら創った「白鳥の湖」は又一つ僕の財産になったように自負しています。
今回、宮下バレエのスタッフの方々とダンサー達の強力なチームワークに支えられながら今日この日を迎えることができたことをどきどきしながらもとても幸せに思います。
とっても楽しい 出会いでした
とっても楽しい リハーサルでした
とっても ありがとう!!!